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現実捉え直した「ビジョン」
新たなビジネスモデルを
経済産業省・製造産業局産業機械課 米村 猛課長
インフラ輸出や環境・エネルギー産業など5分野に官民の力を結集し、2020年までに総額149兆円の新市場を生み出す目標を掲げた経済産業省の「産業構造ビジョン2010」。産業機械は内需が伸び悩む中、外需を獲得することにより生産量を維持・拡大し、今後も世界全体での需要増が見込まれる。いかに外需を取り込んでいくかが課題だ。ビジョン策定に携わった製造産業局産業機械課の米村猛課長に、その趣旨や工作機械の今後を聞いた。
ハイエンドと安価は分けて
――ビジョンは工作機械業界にも大きな反響を呼んでいます。
リーマンショック以降、しばらくは景気対策に取り組んできました。ただ、短期的政策だけでなく、日本が将来何で稼ぎ、何で雇用していくのか、そのために日本の産業をどう成長させるのかをテーマとして中長期的政策についても2月から検討を進めてきました。
世界が大きく変化を遂げている中、徹底した現状分析により、日本の現状を捉え直しました。これまでは、日本の技術が強いなど無条件に信じられてきた議論について、徹底した分析を行って、「神話と真実」を見いだし、その上で中長期的にはどうすべきかを真剣に議論した結果をまとめました。
――産業機械産業についてはどのような議論があったのでしょうか。
産業機械産業は近年、内需に比べて、伸びの大きかった外需の拡大が成長の起爆剤となってきました。今後も内需の大幅な増加は期待できず、外需を如何に取り組んでいくかが重要です。工作機械産業についても、拡大が期待される中国を始めとする新興国市場等の外需獲得が、今後の成長のために必要です。他方で、工作機械は新興国などの安価な製品の拡大によって、シェア確保が懸念されています。
これまで工作機械は国内で製造して、海外に輸出するのが中心でしたが、今後は、国際競争力の維持・確保の観点から海外生産をするのか、しないのか、コア部品の生産拠点やマザー工場をどこに置くのかなども意識的に検討することが必要な時期に来ています。
検討にあたっては、日本の工作機械産業が既に強みをもっている先進国向けのハイエンドな世界と安価なボリュームゾーンの世界を分けて考えないといけないと思います。ハイエンドな世界については、従来通り研究開発に力を入れて、今まで以上に高精度、高効率といった性能の機械で市場を維持・確保をする。これは日本の工作機械メーカーの基本だと思います。
一方でボリュームゾーンについては、中国で生産するとか、設計を見直すことにより機械の価格を抑えるなど各社の判断でどのような取組をするか、しないかを考える必要があります。
2つの世界では、取り組みが異なり、戦略も変わってきます。ここを混同しないようにすることが重要です。いずれの戦略でも海外に売っていくことが重要で、この点を政府としても支援することが重要であると考えていますし、必要な制度改正などにも取り組んでいきたいと思っています。
ビジョンの基本は官民一体の、外国並みのバックアップを目指そう、ということです。近年は、国と国との産業政策そのものの競争になっていて、ビジョンは経産省を総動員して、有識者を含めた腰を落ち着けた議論をしてきました。
勝てる、雇用生む製造業に
――今後の方向性は。
昔は最終製品を売る人が一番儲かっていましたが、今は違ってきています。従来の製品売り切りの形では無く、アフターサービスの拡充、付加機能の充実など新たなモデルが求められ、工作機械は特にサービスの向上、ソリューションビジネスに力を入れて、差別化していく必要があるでしょう。また、他の追随を許さない生産財としての強みを活かせば、他の最終製品に比べるとまだまだ利益のとれる産業です。この強みを再認識し、様々な取り組みを通じて勝てる製造業、雇用を生み出す製造業を目指さなくてはなりません。
――工作機械は20年以上にわたり、世界第1位の生産量でしたが、09年は中国、ドイツに抜かれ、第3位に転落しました。
3位になったことを過度に強調すべきではありません。国によっては、我々が工作機械と捉えていないようなものも含まれており、それを元に、悲観しても始まらない。冷静に現状分析し、しっかりしたビジネスモデルを展開してもらえれば結果は必ずついて来ます。
――ビジョンの実現には予算措置が必要になってくると思いますが。
予算措置への期待はあると感じています。ただし、予算を付けるところとものづくりを支える制度・環境を変えるところ、両方あるのだと思います。ビジョンの実現のためには予算措置も含めた体制整備をきちんとやることが重要だと考えています。
人材・教育支援、MECTでも
――戦略5分野にマザーマシン活躍の場はありますか。
鉄道、原発、環境・エネルギー、医療機器など、しっかり削らなければならない分野は、最先端になればなるほど必要になってくる。最先端の加工ができる工作機械は、やはり世界中を見渡して見ても日本しかないと思いますし、日本の工作機械産業に期待しています。
――日工会の中村健一会長は人材育成に力を入れています。
工作機械産業に限りませんが機械産業は一時期に比べ人気が落ちているのかもしれません。生産財なので学生にとってわからない、目立たないわけです。ただ、理解してもらえれば、役に立つ、やりがいがある、ということになる。よく説明することが大事です。人材育成に一定の不安があるのは間違いありません。優秀な人に入ってもらってぜひ高みに上ってもらいたい。人材育成に関しては直接、間接を問わず、経産省として支援していきたいと考えています。
(聞き手・堀井孝洋)
Profile よねむら・たけし 1989年京都大法学部卒業後、経産省入省。大臣秘書官など歴任、2008年7月から現職。現場主義がモットーでこの2年間で約100の工場を見て歩いた。札幌市出身、1966年生まれの43歳。





